データ分析企業Palantir Technologies(NASDAQ: PLTR)の株価が急落し、重要な節目である100ドルを下回った。2月に入ってから下落が続き、現在の株価は98.42ドルで、週間ベースで20%以上の下落となっている。この下落は、同社の政府契約の見通し悪化や、インサイダー取引による投資家の不安感の高まりと関連している。
特に、米国の国防予算削減の可能性が指摘される中、Palantirの主要収益源である国防関連契約の縮小が懸念されている。さらに、CEOのアレックス・カープ氏による大規模な株式売却計画が発表され、市場の信頼を揺るがした。こうした要因が重なり、投資家の売り圧力が強まっている。
アナリストの評価は分かれており、ジェフリーズはバリュエーションの高さや採用活動の鈍化を理由に60ドルへの下落を予測。一方、ウェドブッシュ証券はAI分野のリーダーとしての強みを評価し、成長の可能性を強調している。PLTR株の今後は、政府契約の動向やAI事業の展開次第で大きく左右されることになりそうだ。
政府契約の減少がPLTR株に与える影響とは

Palantirの事業モデルは、政府機関向けのデータ分析サービスに大きく依存している。同社の収益の多くは米国防総省(DoD)との契約によって支えられており、特にAIを活用した戦略的分析ツールの提供が成長の柱となってきた。しかし、トランプ政権が進める国防予算削減の影響で、これらの契約が縮小する可能性が指摘されている。
国防予算の削減は、特に先端技術分野への投資を直撃するとみられ、Palantirの成長戦略にとって大きな懸念材料となる。過去にも政府予算の見直しによって防衛関連企業の業績が影響を受けた例は多い。例えば、2020年には米国の防衛関連支出の一部が削減され、その結果、多くの契約企業が収益の伸び悩みに直面した。
このような状況は、Palantirの収益構造のリスクを浮き彫りにしている。政府依存度が高い企業は、契約の不確実性や政権交代による政策変更の影響を受けやすい。今後、Palantirが国防関連以外の分野で事業を拡大できるかが、株価回復の鍵を握ることになりそうだ。
CEOによる大規模売却が市場心理を冷やす理由
Palantirの株価下落のもう一つの要因として、CEOアレックス・カープ氏による12億ドル規模の株式売却計画が挙げられる。企業の経営陣が大規模な株式売却を行う場合、投資家はそれを経営陣の「先行きに対する不安」と受け取ることが多い。特に成長企業においては、経営陣が保有株を売却することが「今後の成長余地が限定的」と市場に受け止められやすい。
Palantirはこれまで、AI分野における高い成長期待から評価を得てきた。しかし、今回の売却計画は「短期的な利益確定」とも見られ、投資家心理を冷やす要因となっている。過去にもテクノロジー企業で同様のケースが発生し、株価が急落することがあった。例えば、2021年にはエレクトリック・ビークル(EV)企業のCEOが持株の大半を売却したことで、株価が一時的に30%以上下落した例がある。
ただし、経営陣の売却が必ずしも企業の成長性を否定するものではない。Palantirは依然としてAI技術を活用したソリューションを強化しており、業界内での競争力を維持している。重要なのは、こうした株式売却が一時的な調整なのか、それとも事業成長に対する信頼の低下を示唆するものなのかを見極めることだ。
アナリストの評価が分かれるPalantirの今後
PLTR株の下落を受け、アナリストの評価も大きく分かれている。ジェフリーズのブレント・スリル氏は「高すぎるバリュエーション」を指摘し、株価が60ドルまで下がる可能性を示唆している。その根拠として、成長率の鈍化や採用活動の縮小が挙げられる。企業の成長を示す指標の一つに「採用の拡大」があるが、Palantirは最近、非エンジニアリング職でのコスト削減を進めており、市場はこれを成長鈍化の兆候と見ている。
一方で、ウェドブッシュ証券のダン・アイブス氏は「PalantirはAI分野のリーダーであり、今後も強固な成長を遂げる」との見方を示している。特に、AIソフトウェア市場が拡大を続ける中、Palantirが企業向けAIサービスの提供を強化することで、新たな成長機会を見出せる可能性があると分析する。
このように、PLTR株は短期的な不透明感が強いものの、長期的な視点では依然として成長余地があるとみられている。今後の焦点は、政府契約の行方に加え、企業向けのAI市場でどのように競争力を維持し、成長を実現できるかにかかっている。
Source:Finbold