テスラ(NASDAQ: TSLA)は2024年第4四半期の決算発表を受け、アナリストによる目標株価の修正が相次いでいる。同社の株価は決算発表直後に下落したものの、その後回復を見せた。第4四半期の業績は予想を下回り、特に売上高は257億ドルと市場予想の272億ドルに届かなかった。
アナリストの評価は大きく分かれ、モルガン・スタンレーのアダム・ジョナス氏はテスラのAI・ロボティクス事業の成長性を評価し、目標株価を430ドルに引き上げた。一方で、トゥルイスト・セキュリティーズのウィリアム・スタイン氏は慎重な姿勢を崩さず、目標株価を373ドルとした。さらにUBSのジョセフ・スパック氏は「売り」評価を維持し、目標株価を259ドルに設定している。
テスラはAIやロボティクスを活用した新たな成長戦略を模索しているが、現時点では株価にこれらの分野の将来価値が大きく織り込まれているとの見方もある。今後の事業進捗が、評価の分かれる株価見通しにどのような影響を与えるかが注目される。
テスラの決算が示す事業構造の変化 AIとロボティクスへのシフト
![](https://us-stock.reinforz.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/25885165_m-1024x681.jpg)
テスラの2024年第4四半期決算は、市場の期待を下回る結果となったが、その内訳を見ると、同社の事業構造に変化の兆しが表れている。特に、AIとロボティクスの分野への進出が顕著になりつつある。これまでの主力事業であるEV販売の成長鈍化が指摘される一方で、AIを活用した完全自動運転(FSD)や人型ロボット「オプティマス」などの新事業が、将来的な成長エンジンとして注目されている。
モルガン・スタンレーのアダム・ジョナス氏は、テスラが自動車メーカーではなくAI企業へと進化していると評価し、目標株価を430ドルに引き上げた。同氏は特にFSDの進化と、AI技術が新たな収益源となる可能性を強調した。一方、トゥルイスト・セキュリティーズのウィリアム・スタイン氏は、AI技術の進捗に関する具体的なデータの不足を指摘し、慎重な姿勢を維持した。
AI分野への転換は、テスラの将来にとって重要な戦略的決定であるが、短期的な収益にはまだ大きな影響を及ぼしていない。現時点では、FSDの完全実装やオプティマスの市場投入に関する詳細な計画が不透明なままであり、これがアナリストの意見が分かれる要因の一つとなっている。今後、AIやロボティクス事業の進捗が具体的な形となるかが、株価の行方を左右する重要なポイントとなるだろう。
テスラのビットコイン投資が業績に与えた影響 予想を下回ったEPSの内訳
テスラの2024年第4四半期の決算では、1株当たり利益(EPS)が0.73ドルとなり、市場予想の0.76ドルを下回った。しかし、この数値には6億ドルに及ぶビットコイン(BTC)投資の未実現利益が含まれており、それを除くと純粋な事業活動によるEPSは0.57ドルにとどまる。テスラの業績評価において、このビットコイン投資の影響をどのように捉えるかが重要なポイントとなる。
テスラは2021年にビットコインを購入し、一時はその評価額の変動によって業績に大きな影響を受けた。今回の決算でも、仮想通貨市場の回復に伴い、6億ドルの含み益が計上された。このため、EV事業の収益力とは直接関係のない要因が、EPSを押し上げる結果となった。これに対し、UBSのジョセフ・スパック氏は、ビットコイン投資がEPSの評価をゆがめていると指摘し、目標株価を259ドルと低めに設定している。
また、テスラの本業であるEV販売の収益が圧迫されている点も懸念材料だ。販売台数の伸び悩みや価格引き下げの影響で利益率が低下し、AIやロボティクスなどの新規事業への投資が進む中で、収益構造が変化している。今後、テスラがビットコイン投資を継続するのか、それとも本業の強化に資金を集中させるのかが、長期的な成長の鍵となるだろう。
市場の期待と実態のギャップ アナリストの評価が分かれる背景
テスラに対するアナリストの評価が大きく分かれている背景には、同社の事業の実態と市場の期待の間にあるギャップが関係している。強気派のアナリストは、テスラのAI・ロボティクス分野への投資と成長可能性に着目し、長期的な視点で株価を評価している。一方、慎重派や弱気派は、現在の株価がすでにこうした将来の成長を織り込んでおり、短期的にはリスクが大きいとみている。
モルガン・スタンレーのジョナス氏は、テスラが将来的にAI企業としての価値を確立すると予測し、株価目標を引き上げた。しかし、UBSのスパック氏は、現在の市場評価が過大であり、実際の成長スピードがそれに追いついていないと判断し、目標株価を259ドルとした。
また、売上高の予想下振れも慎重な評価を促している。2024年第4四半期の売上高は257億ドルとなり、272億ドルの市場予想を下回った。EV販売の成長鈍化や競争環境の激化が影響したとみられる。テスラの収益構造がEVからAIやロボティクスへと移行する中で、短期的な業績のばらつきが株価の変動要因となっている。
市場の期待と実態の乖離が大きいほど、アナリストの評価は分かれやすくなる。テスラが今後、AI・ロボティクス分野で具体的な成果を示すことができれば、強気派の見解が正当化されるだろう。一方で、成長が計画通りに進まなければ、慎重派や弱気派の見通しが現実味を帯びることになる。今後の展開が、株価の方向性を決定づけることになるだろう。
Source:Finbold