Nvidia(NASDAQ: NVDA)は昨年、市場で圧倒的な成長を遂げたが、2025年に入るとその勢いに陰りが見え始めた。株価は年初来で11%以上下落し、かつての安全な投資対象としての地位に疑問が投げかけられている。
主な要因は二つある。一つは、過去に指摘されていた高すぎる評価額がいよいよ調整局面に入ったこと。もう一つは、中国のAIモデル「DeepSeek」の登場だ。同モデルはNvidiaの最新チップを使わずに開発され、その低コストと競争力の高さが投資家の不安を煽っている。
一方、ウォール街のアナリストは依然として強気の姿勢を崩していない。Rosenblatt SecuritiesやTigress Capitalは、Nvidiaの株価目標を220ドルと設定し、大幅な上昇余地があると予測する。しかし、トランプ前大統領による対中関税の影響や、AI市場の成長鈍化が懸念される中、今後の展開は予断を許さない。
Nvidiaの株価下落は一時的な調整か、それとも長期的なトレンドか

Nvidiaの株価は、2024年には急騰し、半導体業界を代表する成長銘柄となった。しかし、2025年に入ると状況は一変し、年初から11%以上の下落を記録した。この下落は単なる市場の一時的な調整なのか、それとも長期的な下落トレンドの始まりなのか、投資家の間で議論が続いている。
市場の評価額が高騰した銘柄は、わずかなリスク要因でも急速に売られる傾向がある。Nvidiaの場合、特に注目されているのが、AIブームによる過熱感の終焉と、競争環境の変化だ。特に、Nvidiaのチップを採用しない中国のAIモデル「DeepSeek」の成功は、同社の技術的優位性に対する疑問を引き起こしている。
とはいえ、AI向け半導体市場は今後も拡大する見通しであり、Nvidiaがすぐに市場から後退する可能性は低い。さらに、Rosenblatt SecuritiesやTigress Capitalが220ドルの目標株価を掲げるなど、ウォール街のアナリストは引き続き同社の成長に期待を寄せている。ただし、今後の展開は、AI市場の成長速度や競合他社の動向に大きく左右されることになるだろう。
トランプ前大統領の関税政策がNvidiaに与える影響
Nvidiaにとって、もう一つの懸念材料となっているのが、米国の対中関税の影響だ。2月1日、ドナルド・トランプ前大統領が中国からの輸入品に10%の追加関税を課すと発表した。この動きは経済学者から批判を受けており、米中貿易戦争の激化を示唆するものと捉えられている。
AI関連企業にとって、中国市場は重要な成長ドライバーの一つである。Nvidiaの製品は、中国のデータセンターやテクノロジー企業に広く使用されているため、貿易摩擦が同社の売上に与える影響は無視できない。ただし、短期的にはNvidiaの供給体制には大きな影響が出ないと見られている。すでに同社の主力製品は今後12か月分の注文が埋まっており、少なくとも今年前半は需要の落ち込みを回避できる可能性が高い。
それでも、中国が米国の半導体技術に依存しない独自のエコシステムを構築する動きを強めれば、長期的にはNvidiaにとってリスク要因となり得る。特に、中国企業が独自のAI向けチップを開発し始めた場合、Nvidiaの市場シェアが徐々に奪われる可能性がある。この点で、Nvidiaは貿易摩擦を乗り越えるための新たな戦略を求められることになるだろう。
AI市場の進化とNvidiaの将来性—競争環境の変化にどう対応するか
Nvidiaの成長を支えてきたAI市場は、今や過渡期を迎えている。これまで同社のGPUがAI開発の中心にあったが、新興企業や競合他社が独自のソリューションを開発し、市場の勢力図が変化しつつある。
特に注目されるのが、GoogleやMetaといった巨大テクノロジー企業の動向だ。これらの企業は、NvidiaのGPUに依存せず、自社開発のAIチップを活用する動きを強めている。たとえば、GoogleのTPU(Tensor Processing Unit)は、AI向けの専用チップとして急速に進化しており、Nvidiaのシェアを侵食する可能性がある。
また、中国市場では、Huaweiなどの企業が自社開発の半導体を投入し、Nvidiaの製品に代わる選択肢を増やしている。このような動きは、Nvidiaにとって競争環境の変化を意味し、同社の成長戦略に大きな影響を及ぼすことになるだろう。ただし、AI市場そのものの成長は続くと予想されており、Nvidiaが技術革新を継続できれば、依然として市場をリードするポジションを維持できる可能性は十分にある。
今後の焦点は、Nvidiaが競争の激化にどう対応するかだ。2月26日に予定されている決算発表では、同社の売上動向だけでなく、今後の戦略についても市場の注目が集まることになるだろう。
Source:Finbold