Palantir(PLTR)の株価が急落し、月曜日の取引で約10%下落した。過去5回の取引セッションでは22%以上下げ、今月の高値からは25%以上の下落となっている。これは、CEOアレックス・カープの株式売却計画と、国防長官ピート・ヘグセスによる国防予算削減の発言が主な要因とみられる。
一方で、2025年に入ってからの株価は23.5%以上上昇しており、S&P 500の伸びを大きく上回る。ただし、アナリストの評価は慎重であり、小売投資家による支持が続くのか、市場の注目が集まる。
政府契約依存のリスクと市場の懸念

Palantirは、政府機関との契約を主な収益源としており、特に米国防総省や諜報機関向けのデータ分析ツールの提供が柱となっている。しかし、国防長官ピート・ヘグセスの国防予算削減の発言は、この依存構造の脆弱性を露呈した。米政府の支出方針が変われば、Palantirの収益見通しに直結し、株価の変動要因となる。
政府予算の変動は過去にも同社の業績に影響を与えてきた。例えば、2020年の米大統領選後には国防費の見直しが進み、一部の契約更新が遅れたことで株価が不安定になった経緯がある。今回の状況もそれに似ており、投資家の不安が高まっている。加えて、政府支出の削減が進めば、新規契約の獲得ペースが鈍化する可能性もあり、売上成長の鈍化が警戒されている。
このような状況に対し、Palantirは民間企業向けの事業を拡大し、政府依存からの脱却を進めている。実際、近年は製薬や金融分野の大手企業との契約を増やしており、データ分析の応用範囲を広げている。しかし、現在の売上の大部分は依然として政府契約に依存しており、短期的なリスクは払拭できていない。今後、政府支出の減少をどのように補うかが、同社の成長戦略における最大の課題となるだろう。
CEOの株式売却がもたらす市場の不信感
CEOアレックス・カープが発表した株式売却計画は、市場に大きな影響を与えた。経営陣の持ち株売却は一般的に「内部者が株価のピークと判断し、利益確定を図っている」と受け止められる傾向がある。特に、ここまで急上昇したPalantirの株価が、これからも成長を続けるのか疑問視される中での売却決定は、市場の警戒感を高めた。
過去にも、CEOや経営陣の大規模な売却が株価の下落を引き起こした例は少なくない。例えば、2021年にはテスラのイーロン・マスクが約50億ドル相当の株式を売却し、同社の株価が大きく変動したことがある。Palantirの場合、カープの売却が一時的な資金確保のためなのか、それとも成長に陰りを見た上での決断なのか、投資家の間で憶測を呼んでいる。
一方で、Palantirの個人投資家の支持は依然として根強い。CEOのカリスマ性や、AI技術への期待が買い材料となり、短期的な株価下落を「調整局面」と見る向きもある。しかし、カープの動きが市場に与えた影響は無視できず、今後も追加の売却が行われるかどうかが注目される。内部者の動向は市場心理に直結しやすく、特に成長株であるPalantirにとっては重要な要因となる。
AIとデータ分析市場での成長余地はあるのか
Palantirの強みは、AIとビッグデータ分析に特化した独自の技術にある。特に、政府機関や大手企業が必要とする高度なデータ解析能力を提供し、意思決定をサポートする点が評価されてきた。2024年の株価急騰も、この技術分野の成長性に対する期待が大きく反映された結果といえる。
一方で、AI市場の競争は激化している。GoogleやMicrosoftといったテクノロジー大手もAI分野に巨額の投資を行っており、Palantirの独自技術がどこまで競争力を維持できるかは不透明だ。特に、民間企業向けのビジネスでは、既存の大手プレイヤーと競合する場面が増えており、価格競争や技術革新のスピードについていく必要がある。
今後、Palantirが成長を維持するには、政府契約への依存度を下げるとともに、民間市場でのシェアを拡大することが不可欠となる。すでに製薬・金融・エネルギー業界への展開を進めているが、競争環境が厳しい中でどこまで市場を切り開けるかが鍵を握る。AI技術の進化が続く中、Palantirがこの分野でどのような戦略を打ち出すのか、市場の関心が集まっている。
Source:Wall Street Pit