株式市場が関税問題や中国企業の台頭、大手企業の業績変動などで揺れる中、安定した収益源を求める投資家にとって、配当株は魅力的な選択肢となっている。

特に、IBM、ベライゾン、EPRプロパティーズの3社は、高い配当利回りと成長の可能性を兼ね備え、専門家からの評価も高い。これらの銘柄は、市場の不確実性に対する防御策として検討する価値があるだろう。

IBMのAI戦略と配当維持の裏側

IBMは、AI技術の進化とRed Hatの統合によって、事業の収益構造を大きく変化させている。特に、クラウドサービスとAI関連のソフトウェア分野は成長を続け、同社の利益率向上に寄与している。IBMの戦略は、高利益率の分野に集中しながらも、長年にわたる配当維持を最優先にしている点が特徴的である。AI市場の競争が激化する中、IBMは自社の強みを活かしながら持続的な配当支払いを確保するための手段を模索している。

Evercoreのアナリスト、アミット・ダリャナニ氏は、IBMの今後の成長性について楽観的な見解を示している。彼は、IBMの株価目標を引き上げた背景として、AI関連の技術革新とRed Hatを活用したクラウド展開を挙げる。これにより、IBMは新たな市場を開拓し、長期的な競争力を高める可能性がある。一方で、AI分野の競争は厳しく、MicrosoftやGoogleなどのテクノロジー企業が巨額の投資を続けている点も考慮すべき要素だ。

IBMの配当利回りは2.6%と安定しており、特に市場の変動が激しい状況下では、予測可能な収益を求める層にとって魅力的な選択肢となる。しかし、IBMが今後も高配当を維持できるかは、AI事業の収益性やクラウドサービスの成長次第である。競争環境が変化する中で、IBMが継続的な配当支払いと成長の両立を実現できるかが注目される。

ベライゾンの高配当維持と5G市場での成長戦略

ベライゾンは、6.8%という高配当利回りを維持しながら、5G技術を活用した市場拡大を進めている。同社は、過去5年間で最大のポストペイド契約者数の増加を記録し、通信市場における競争力を維持している。Tigress Financialのアナリスト、アイヴァン・ファインセス氏は、ベライゾンのネットワーク強化とAI技術の導入が、今後の成長を支えると分析している。

ベライゾンの成長戦略の中心には、5Gサービスの拡充がある。5G技術は、高速データ通信と低遅延を可能にし、新たなビジネス機会を創出している。特に、IoT(モノのインターネット)やスマートシティの分野では、ベライゾンの5Gインフラが重要な役割を果たしている。加えて、同社はAIを活用した顧客分析を強化し、ユーザーエクスペリエンスの向上を目指している。

しかし、5Gインフラの整備には巨額の投資が必要であり、その負担が配当維持に影響を及ぼす可能性もある。現在の配当利回りは高水準にあるが、今後の市場環境や財務状況によっては、配当政策の変更も検討されるかもしれない。ベライゾンの株価は39.88ドルで推移しており、ファインセス氏は株価目標を55ドルと設定している。今後の成長の鍵は、5G関連事業の収益化とコスト管理のバランスにあると考えられる。

EPRプロパティーズの収益基盤とエンターテインメント市場の動向

EPRプロパティーズは、映画館や遊園地、テーマパークなどの体験型不動産に特化したREIT(不動産投資信託)である。配当利回りは7.2%と高水準にあり、長期投資を目的とする層にとって魅力的な選択肢となっている。RBC Capitalのアナリスト、マイケル・キャロル氏は、エンターテインメント市場の回復がEPRの成長を後押しすると見ている。

EPRの収益構造は、エンターテインメント施設の賃貸収入を基盤としている。COVID-19の影響で一時的に需要が減少したが、経済活動の正常化とともに人々の外出機会が増加している。特に映画市場では、新作映画の公開本数が回復し、映画館への来場者数が増加していることが、EPRの業績を支えている。また、遊園地やスポーツ施設の利用者数も回復基調にあり、同社の不動産需要が安定している。

ただし、エンターテインメント業界は景気の影響を受けやすく、経済の減速が消費者の支出に影響を及ぼす可能性もある。EPRの収益の一部は可変賃料によるものであり、テナントの業績が低迷すれば賃貸収入に影響を与えることが考えられる。とはいえ、同社は年間3%〜5%の増配を見込んでおり、現在の株価(47.69ドル)に対する評価は割安感があるとされている。エンターテインメント市場の動向を注視しながら、EPRの今後の成長戦略に注目が集まる。

Source:Wall Street Pit