米国株式市場が大幅に下落する中、著名アナリストのトム・リー氏は「今回の下落は一時的な調整に過ぎず、反発の機会となる」と指摘した。S&P 500は直近5日間で2.66%の下落、ダウ平均は1.93%の下落を記録し、特にエヌビディアは9.21%下落と市場全体のセンチメントを象徴する動きを見せた。

リー氏が市場の回復を予測する主な理由は、エヌビディアの決算発表にある。同社は過去にも予想を上回る業績を発表しており、今回も市場の不安要素が収まるきっかけとなる可能性が高い。また、インフレが穏やかに推移すればFRBの利下げ期待が高まり、株価のさらなる上昇要因となる見込みだ。

市場が反転するかどうかは、エヌビディアの決算発表と経済指標の推移にかかっている。投資家にとっては、慎重に押し目買いの機会を見極める局面となりそうだ。

エヌビディアの決算が市場の方向性を決める可能性

エヌビディア(NASDAQ: NVDA)は、2月26日の引け後に決算発表を予定している。直近では同社の株価が9.21%下落し、126.63ドルまで落ち込んだが、市場の注目がこの決算に集中している。過去の決算発表では、エヌビディアは予想を上回る成長を示し、株価を押し上げる要因となった事例が多い。

特に今回の決算は、AI需要の拡大や半導体業界全体の動向を測る指標にもなる。エヌビディアはAI分野でのリーダー的存在であり、生成AIやデータセンター向けの半導体販売が成長をけん引している。市場では、データセンター事業の売上が予想を上回れば、半導体セクター全体の回復シグナルになる可能性が指摘されている。

一方で、懸念材料もある。米中対立による輸出規制がエヌビディアの成長を鈍化させるリスクがあり、特に中国向けの先端半導体販売の制限が業績に与える影響は未知数だ。加えて、インフレ動向や金利の先行きが不透明な中、投資家は慎重な姿勢を崩していない。今回の決算が市場全体のセンチメントを好転させるのか、それとも一段の下落を引き起こすのか、その行方に注目が集まる。

FRBの金融政策と市場への影響

市場の回復に向けたもう一つの重要な要素は、FRB(米連邦準備制度)の金融政策である。最近のインフレ指標が予想以上に強い結果となれば、FRBは利下げ時期を遅らせる可能性がある。これにより、株式市場の回復が鈍化し、特にハイテク株には大きな影響を与えると考えられている。

過去の例を見ても、FRBの政策転換は市場に大きな影響を与えてきた。2023年後半には、インフレ鈍化とともに利下げ期待が強まり、それが年末にかけての株価上昇の要因となった。しかし、2024年初頭のデータでは、消費者物価指数(CPI)が予想を上回る結果となり、利下げの期待は後退した。この流れが続けば、ハイテク株中心のナスダック市場を含めて、調整局面が長引く可能性もある。

一方で、エヌビディアの決算が好調であれば、市場はこの不安要素を一時的にかき消す可能性がある。AIやデータセンター需要の強さが確認されれば、ハイテク株全体の成長ストーリーが再び意識され、短期的な押し目買いが活発化する展開も考えられる。結局のところ、市場の方向性を決定づけるのは、FRBの政策だけでなく、企業の成長力が持続するかどうかという点にかかっている。

投資家は下落局面をどう捉えるべきか

トム・リー氏は今回の市場の下落を「かすり傷」に例え、過去の事例からも短期間での回復が期待できると述べている。実際、2024年9月には市場全体が調整局面に入ったが、その後の年末には株価が力強く反発した。今回も同様の展開になる可能性があるとの見方もあるが、すべての銘柄が均等に回復するわけではない。

短期的な調整は、押し目買いの好機となる場合もある。特に、AI関連銘柄や半導体企業は、長期的な成長が見込まれる分野であり、過去の下落局面では大きなリバウンドを見せたケースも多い。しかし、一方で市場全体のリスク要因として、金利動向、地政学的リスク、景気の減速懸念といった要素は引き続き無視できない。

そのため、投資家にとっては、単なる短期的な回復を狙うのではなく、成長の継続が見込まれる企業を見極めることが重要となる。特にエヌビディアの決算が市場の潮目を変える可能性がある以上、その内容を冷静に分析し、今後の戦略を慎重に判断することが求められるだろう。

Source:Finbold