Nvidia(NASDAQ: NVDA)の株価が2025年に入り下落を続け、年初来で17.5%の下落幅に達した。今週は特に急落し、8.69%安の115ドルを割り込む展開となった。次の重要なサポートラインは100ドルとされるが、市場は当面、リスク回避姿勢を強める可能性がある。
今回の下落の背景には、NvidiaのAIチップが第三者販売業者を通じて中国市場に流入している可能性があるとの報道が影響している。米国の輸出規制に違反する恐れがあることから、シンガポール当局も関連調査を進めている。これを受け、DA Davidsonのアナリストは、米国政府の対応次第ではNvidiaの事業に深刻な影響を及ぼす可能性があると指摘している。
Nvidiaは過去にも規制に対応するために中国向けGPUを調整してきたが、今回の事態がAI市場全体の供給網に波及する可能性も否定できない。競争の激化と規制強化の板挟みの中、Nvidiaの対応が今後の株価動向に大きな影響を与えることになりそうだ。
Nvidia株急落の背景 関税と輸出規制の影響

Nvidiaの株価が急落した要因の一つに、米国の輸出規制と関税の影響がある。特に、AI関連の先端半導体は国家安全保障上の問題として規制が強化されており、Nvidiaの最新チップ「Blackwell」シリーズも対象となる可能性が指摘されている。この規制の一環として、特定の半導体が中国に流出することを防ぐための監視が強化されているが、一部の製品は第三者経由で中国市場に供給されているとの報道がある。
Nvidiaはこれまでも中国市場向けにスペックを抑えたGPUを販売するなど規制への適応を進めてきたが、今回の報道を受けて米国政府の対応がさらに厳格化する可能性がある。特に、シンガポールを経由した迂回輸出が問題視されており、シンガポール当局も関連企業に対する調査を進めている。こうした動きはNvidiaだけでなく、サプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性がある。
米国政府が規制を強化すれば、Nvidiaの中国向け販売戦略にも影響が出ることは避けられない。さらに、関税の発動により価格競争力が低下することで、同社の市場シェアにも変動が生じる可能性がある。AI市場が成長を続ける中で、Nvidiaは規制に適応しながら収益性を維持する戦略が求められる局面に入っている。
重要なサポートライン割れ さらなる下落の可能性
Nvidiaの株価は年初来で17.5%下落し、特に今週の急落で115ドルの重要なサポートラインを下回った。この水準は過去にサポートおよびレジスタンスとして機能していたため、投資家にとって心理的に重要なラインだった。次の下値支持線は100ドル付近とされるが、さらなる下落圧力がかかる場合、このラインも試される可能性がある。
市場全体がリスク回避の動きを見せる中で、半導体関連銘柄も軟調な展開が続いている。Nvidiaの株価は2024年6月の株式分割後に急騰していたが、その後の調整局面に入っていることが今回の下落要因の一つと考えられる。これまでの急成長の反動が出た形となり、利益確定の売りも重なっている。
Nvidiaの成長ストーリーが揺らぐわけではないが、短期的なボラティリティは高まりやすい状況にある。市場のセンチメントが回復し、再び買い戻しが入るかどうかは、規制リスクの行方や米国政府の対応次第となる。100ドルラインが守られるかどうかが、今後の株価動向を占うポイントとなるだろう。
AIサプライチェーンへの影響とNvidiaの対応
NvidiaはAI市場のリーダーとして、強固な技術基盤と市場シェアを確立している。しかし、今回の輸出規制問題が浮上したことで、サプライチェーン全体への影響が避けられない状況となっている。特に、AI関連のデータセンター向けチップは、各国の規制や貿易政策に大きく左右されるため、今後も規制強化の動向を注視する必要がある。
これまでNvidiaは、H20、L20、L2といったスペック調整版のGPUを中国向けに提供することで規制対応を行ってきた。しかし、今回のように迂回輸出の疑いが浮上すると、今後は規制当局による監視がさらに強化される可能性がある。Nvidia自身は、独立した販売業者の行動に責任を負う立場ではないとしているが、市場の信頼性を維持するためには、新たな対応策を講じる必要が出てくるだろう。
この問題はNvidiaだけの課題ではなく、AI技術をめぐるグローバル競争にも影響を与える。米国と中国の対立が激化する中で、AIサプライチェーンの安定性がどのように維持されるのかが、業界全体にとっての重要な課題となる。Nvidiaの今後の戦略が、AI市場の今後を占う上での重要な指標となりそうだ。
Source:AskTraders